スマホのカレンダーに、うっすら残っていた“彼の誕生日”のメモ。
削除したつもりだったのに、通知が表示されて、胸の奥が少しざわついた。
もう何年も経つのに、あの日のことだけは、不思議と鮮明に思い出せる。
思い出は、ふとした瞬間に顔を出す
誕生日が近づくと、当時のことをふと考えてしまう。
どんなメッセージを送ろうか悩んで、何度も下書きを書き直した夜。
今でも、あのときの胸の高鳴りや小さな不安まで思い出せる。
忘れたくても、完全には消えない。
それを「未練」と呼ぶのか、「思い出」と呼ぶのか、わからなくなる。
ただ、思い出すたびに少しだけ胸が痛むのは、まだ彼の存在が
わたしの中で“生きている”からなんだと思う。
気持ちを整理したくて、占いを受けてみた
そんな夜、心が静かにざわついて眠れなくなり、
気づいたら占いのサイトを開いていた。
恋愛相談が得意だという占い師さんの紹介文に惹かれて、予約ボタンを押した。
もう終わった恋だとわかってるのに…。
誕生日を覚えているのは、未練ではなく“優しさの記憶”です。
あなたが誰かを大切にできる人だからこそ、心が反応しているんです。
その言葉に、胸の奥がじんわりとあたたかくなった。
「忘れること」よりも、「その思いを認めること」のほうが、
ずっと難しいけれど、たぶんそれが“前に進む”ということなのかもしれない。
占いを通して、自分を責めなくなった
占いを終えたあと、カレンダーを開いて、彼の誕生日メモをそっと削除した。
それは、彼を消すためじゃなく、「もう大丈夫」と自分に伝えるための行為だった。
思い出を無理に閉じ込めるより、静かにたたむ方がずっと自然だと思えた。
心の中で「ありがとう」とつぶやいた。
それだけで、少し呼吸が深くなった気がした。
本気で好きだった人の記念日は、時間が経っても心に残る。
でも、それはもう“痛み”じゃなく、“優しさのかけら”。
誰かを大切に思えた自分を、責める必要なんてない。
そんな夜は、少しだけ月を見上げて、静かに深呼吸しよう。



