私の「しおり」の物語
はじめまして、カンナです。
アラフォー、地方在住、地元メーカー勤務。ごく普通の会社員です。
でも、20代後半に一度だけ、人生に「しおり」を挟んだことがあります。
それが、韓国への1年間の留学でした。
辞めたくても、辞められなかった
最初の就職先は、都市部の会社でした。
毎日しんどかった。でも、辞められなかった。
部署はずっと人手不足で、みんな毎日ギリギリの状態で働いていた。
そんな中で「辛いから辞めたい」なんて言ったら、迷惑をかけることになる。
自分が抜けたら、残った人がもっと大変になる。
そう思うと、なかなか言い出せなかった。
一度打ち明けたとき、強く引き止められた経験もあった。
あのときの消耗感は、今でも忘れられません。
韓国旅行が、唯一の逃げ場だった
そのころ、K-POP・韓国ドラマ・韓国料理にどっぷりハマっていました。
ストレスが溜まると、韓国弾丸旅行へ。
現地の空気を吸うたびに、少しだけ息ができる気がした。
そうやって何度も通ううちに、ある日ふと思ったんです。
「もういっそ、仕事を辞めて韓国に住んじゃえばいいんじゃないか。」
「仕事が辛い」では引き止められる。でも「留学したい」なら、話が違う。
留学という言葉には不思議な力があって、「逃げ」が「チャレンジ」に変換されるんですよね。
同じ退職でも、受け取られ方がまるで違う。
それが、わたしの「建前退職」作戦の始まりでした。
実は、海外は初めてじゃなかった
韓国に行く前、一度だけ海外に出た経験がありました。
でも正直に言うと、そのときは全然勉強しなかった。
せっかくの機会だったのに、遊んで終わった。
語学の力も、何かを掴んだ感覚も、ほとんど残らなかった。
帰国してからずっと、心のどこかに引っかかっていました。
「あのとき、ちゃんとやっていれば」という後悔が。
だから韓国では、今度こそやろうと決めていました。
同じ後悔は、もうしたくなかったから。
韓国での1年間
大学の語学堂に通いながら、コシウォンで暮らしました。
コシウォンというのは、机とベッドを置いたら終わりの、ものすごく狭い部屋のことです。
たぶん独居房ってこんな感じなんだろうなっていう広さ。
贅沢とは程遠い、ぎりぎりの貧乏生活でした。
でも不思議なもので、狭い部屋ほど人間は余計なことを考えなくなる。
午前中は語学堂で韓国語を勉強して、午後は友達と遊んだりオタ活したり。
週に何日かは夜に英語塾のTOEIC講座へ。
ハードだったけど、毎日が充実していました。
誰かに気を遣うことなく、ただ自分のために時間を使う日々。
あんなに「今日を生きている」と感じたことは、それまでなかったかもしれません。
帰国後、地元に戻って気づいたこと
帰国後は、英語と韓国語の資格を武器に転職活動をしました。
選んだのは、都市部ではなく地元のメーカー。
通勤ラッシュも、終電を気にする夜も、もういらなかった。
地方で、のんびり、安定して働く毎日。
あの消耗していた日々と比べると、別の人生みたいです。
それから10年以上、同じ会社で働き続けています。
10代のころは、地方が嫌いで仕方なかった。早く都会に出たいと思っていた。
それなのに「世界を見てきた結果、地元がいちばん居心地が良い」というのは、傍から見れば地味かもしれない。
でも、これがわたしの答えです。
遠くに行ったからこそ、ここが好きだとわかった。
後輩との出会いが、すべてのきっかけ
転職してから何年か経ったころ、10歳近く年下の後輩が入ってきました。
真面目で、前向きに仕事をする子でした。
でもあるときから、ちょっと様子が気になるようになって。
表情が暗いとか、笑わなくなったとか、そういうわけでもないんです。
でも、なんとなく。
「この子、無理してるな」というのが、伝わってくる感じがありました。
それから、ふたりで話す機会が増えました。
ある日、なんとなくの流れで、わたしの過去の話をしました。
辞めたくても辞められなかった話。
「留学する」と言って円満退職した話。
コシウォンで貧乏しながら過ごした、あの1年間の話。
後輩はずっと黙って聞いていて、最後にぽつりと言いました。
「わたし、ロンドンに昔から住んでみたかったんです」
後輩がロンドンへ行った話
それから数ヶ月後、後輩はワーキングホリデーでロンドンへ旅立ちました。
「人生一度きりだから」と、笑顔で言っていました。
後輩がロンドンにいる間、わたしは有給を消化してヨーロッパへ。
現地で、後輩と再会しました。
一緒に観光地を巡ったり、ご飯を食べたり。
2日間、ただそれだけの時間でした。
でも、その2日間で気づいたことがあります。
後輩が、一緒に働いていたときよりも、ずっと活き活きしていたんです。
表現が難しいんですけど、なんというか、世界の見え方が変わったような顔をしていました。
「この子の人生に、ちゃんと息抜きがあってよかった」
「あのまま、何も変わらずに終わっていなくてよかった」
そう思ったら、なんだか泣きそうになりました。
このサイトで伝えたいこと
留学は、人生を劇的に変えるためだけのものじゃない。
しんどくなった人生に、「しおり」を挟む手段だとわたしは思っています。
ページを閉じて、少し休んで、また開く。そのための、しおり。
後輩との再会で気づいたのは、今いる場所・今見えている景色が「世界のすべて」だと思い込んでしまうことの、もったいなさです。
習慣も、文化も、価値観も違う場所に身を置くと、「自分は地球に住んでいて、どう生きるかは選択できるんだ」と、不思議とすんなり思えるようになります。
「辞めたいけど辞められない」「逃げたいけど逃げ方がわからない」「本当は海外に住んでみたい」「今の生活がとにかく嫌だ」。
そう感じているあなたに、わたしと後輩の話が、少しでも何かのきっかけになれば嬉しいです。
